煙のような空理空論

人生にまつわる様々な疑問やストレスに対する自分勝手な考察。

「J-POPはつまらない」という意見とその要因についての考察(前編)

〝日本の音楽はつまらなくなった〟と言われて既に久しい。

これは音楽のみならず、エンターテインメントと呼ばれるあらゆる大衆向けの娯楽作品がこれに該当するだろう。しかし今回は、その中でもとりわけ受動的にあらゆるコンテンツから耳に入ってきやすい“音楽作品”に的を絞り、つまらなくなったその要因についての考察を自分勝手に試みた。

 

 

先に書いておくが、作品に対しての好き嫌いの判断というものは、様々な感情要素が絡み合って構成される。よって「あの頃は良かった」という筆者の懐古主義的な感情が混ざっていることも否定できないが、今回はできる限りその要素を除外し、建設的に考察するよう心がける。

 

目次

“つまらない”事がなぜいけないのか

「J-POPはつまらない。」

これはそのジャンルを好き好んで聴いている者からすれば非常に屈辱的な意見であるだろう。通常は、それを認知している良識ある者なら「この音楽はつまらない」などとわざわざ口に出して主張しない。〝興味がないのなら聴かなけば良い〟からである。実際、小さい子供が好んで聴いている音楽に大半の大人は興味がないが、「つまらない」と嫌悪感を抱く者はほとんどいない。

 

しかし現在、音楽を愛でている者の多くがこの「J-POPがつまらない」ことに憤りを感じているのは事実である。〝つまらないなら聴かなけば良い〟にも関わらず、なぜそのジャンルに対してこんなにもに嫌悪感を抱いているのか。

 その要因は、ただ単につまらない音楽が存在する事への苛立ちではない。

つまらないと感じる音楽ばかりが、〝最も優れた音楽〟であるかの様に称されていることへの憤りであると考えた方が良い。

 よって、この問題に対して「つまらないなら聴かなければ良い」という意見は適切ではない。 

 

しかし先にも述べた様に、作品に対しての好き嫌いの評価は個々によって様々である。

例えば、私が好む音楽ばかりが日本のランキング上位に並べば満足かというと、そんな事はないはずである。全ての人間が納得するランキングなどない。

では彼らが概ね納得する現状というのはどういうものか。

 

ここで、理解しておかなければはならない事がある。

“好きな音楽”と、“良い音楽”の区別である。

  

これについて詳しく述べる前に、実際に世間が「つまらない」と感じている要素について確認しておきたい。

 

つまらないと感じる要素 

インターネットやその他メディア、また実際に耳にする意見の多くは、概ね次の様なものである。

  • 似た様な曲、似た様な歌い方ばかり
  • 歌詞の内容が薄っぺらい、心に響かない

これはJ-POPがつまらないと感じている者のほとんどが共感できる内容であると思う。

要するに「退屈である」ということである。J-POPというジャンルの定義は定かでは無いが、むしろ上の意見に該当する音楽は総じてJ-POPと呼んでも強ち間違いではない状況にすらある。

その他に、

  • アイドルばっかり
  • やたら大人数で踊る意味がわからない
  • 見た目やキャラで売っていて純粋な音楽ではない
  • 女子高生の恋愛の様な曲ばかりで共感できない

などといった意見も一部見られる。

実際に私の周りの友人知人の多くも殆ど同じ様な意見を持っており、日本中でもかなりの人間がそう感じているだろう。にも関わらず、ふとテレビを見ると上の意見に該当する音楽ばかりが目立っている。そして誰も「つまらない」などとは言わない(心の中ではどうかわからないが)。自分が本当に同じ国に住んでいるのか疑うほどである。

 

なぜメディアはこの様な音楽ばかり取り上げ続けるのか?

それは至って単純である。

実際にその音楽が売れているからである。

 

 

なぜ良い音楽が売れないのか

 「本当に良い音楽が全く評価されない」と嘆く声を私は幾度となく聞いてきた。

なぜ良いと感じる音楽は売れず、つまらないと感じる音楽ばかりが売れているのか?

これもまた単純であり、その楽曲を買う人間の方が圧倒的多数派であるからに他ならない。そして買う人間はそれを「つまらない」などとはもちろん思っていないし、むしろ逆に“良い音楽”の方を「つまらない」と思っていることだろう。要するに、その音楽の“良さ”が理解出来ていない。

 

「最近はミュージシャンの質が落ちている」と、日本の音楽シーンの低迷の要因がミュージシャン側にあるかの様な意見をたまに耳にするが、私は決してそうは思わない。

実際に、現在の日本にも世界に誇れるほどの素晴らしい楽曲や演者はいくつも存在することを私は知っている。しかしそのほとんどが売上ランキング上位に入ることはないし、テレビなどで取り上げられる事も少ない。ライブや音楽フェスで人気を確立し大成功を収めているバンドでも、音楽番組では名前すら上がらないというのはかなり異様である。

 

ここではっきりと提言しておきたいが、

日本の音楽シーンが低迷している最大の要因は、演者でも音楽業界でもなく、それを聴くリスナー側にある。

 

表現手法にこだわり、歌詞のメッセージ性や文学性をいくら追求したところで、聴く側の大半が理解できず、むしろそこに興味すらないのだから、生産性を考えれば実質無駄である。そして内容もない歌詞でも見た目やキャラが良ければ喜ぶ、まるで“幼児”の様な判断基準のリスナーが多数派である限り、音楽業界はそれを排出し続ける。

 

また、テレビは主に多数派の好む音楽しか取り上げないし、ミュージシャン側もテレビに出ている下手なJ-POPと一括りにされるのを嫌うため出演したがらない。よって、テレビから情報を得るJ-POPしか知らないリスナーは彼らの楽曲を耳にする機会も無く、J-POPリスナーとそれをつまらないと感じる者との価値観の格差は広がっていく一方である。

 

「J-POPがつまらなくなった」ことは、「日本人の音楽に対する理解力の低下」と明確にリンクしている。J-POPがつまらないことよりも、それを面白いと思っている人間が圧倒的に多いという事実をまず悲しむ方が先かもしれない。

 

 

長くなってしまったので続きは明日書く(多分)